SSブログ

夢とひきかえにした想い  [あの日から今日まで]

”彼”が≪俺の人生の一回目のピーク≫と言っている時代…。それが、東京で暮らした数年であり、その時期を共に過ごしたのが”二回目の記念日”に紹介してくれた心友夫妻である―

”親友”ではなく”心友”と記したか?時折、”彼”から聞いていたのが”あの二人に何かあった時は、子供たちが不自由しない程度の物だけは残して、全ての物を手放してでも助ける…”という言葉。 そして、実際に会ってみて、それだけ深い部分で、心と心が通じ合っているのを感じた時、その思いが豪語でない事を思い知ったからだ…。

その二人を”彼”が私に紹介してくれた時の口上―

「俺を振った女と勝ち組の男(笑)」 (のっけから爆弾発言に目を白黒させた私)

かつて、同じバンドで夢を追いかけていた二人がマネージメントスタッフであった彼女を取り合った…というコトらしい(笑) (う~ん、負けたのかぁと複雑な心境だった)

ご主人の謙吾さん、奥様の玲子さんとても素敵な夫婦で、今では私にとっても大切な存在である。


”何でも話してやってよ…”そんな言葉を残して、”彼”は玲子さんと私を二人っきりにした。 それは、私以外の三人が企てた言わば出来レースだったらしい―

「美由ちゃんは何が知りたいの?(笑)」

「あの…もういいんですココに来る前に色々あって、私が言った事を雅樹が気にしてるだけだから。」

「ゴメンネ…本当はだいたいの話は雅から聞いてるの。」

「そうなんですか?心配かけてすみません

「でも、雅が話しちゃイケナイ事はナイって言ったから、私だったら知りたい事だけ勝手に話しちゃうね(笑)」

肩を竦めながら、いたずらっ子のような仕草でそう言って彼女は話を始めた。

「あの人…なかなか人に心を開かない人でしょ?だから苦労したの最初は…。何を考えてるのかわからないんだもの(笑)」と、こんな言葉から―

確かに言葉が足りない部分はある、でもそれを言えば私も同じで、余分な事は言えても、大切な事がなかなか言えない…という点ではイーブンだ。

”彼”との出会いから音楽活動に至るまでを、懐かしそうに、時にはお姉さんのように私を諭しながら…淡々と語ってくれた。

そして、プロデビューを目前にして”夢”が木端微塵になった時の事に話が及ぶと、彼女の顔から笑顔が消えてしまったのだ。

「あの時の雅の決断は間違いではなかったと思う。ただ、その捨てた夢が二人にとって重すぎたのかな。」

恋愛関係があっての結婚ではない、いわゆる”出来ちゃった婚”で、それを許さない所属事務所サイドとの見解の相違により、二つに一つの究極の選択を迫られたという。

  • ゆきずりの女性を見捨てて目の前に開かれた道を選ぶ。
  • 結婚をするのであれば全ての契約を白紙に戻す

事務所側から切られた期限ギリギリまで悩んで、”彼”は自分の境遇を打ち明け、自分の決断がメンバー全員にとっても夢の終わりを意味するという事を充分認識した上で、土下座をついて≪結論≫を伝えたという。

「俺達、音楽やるためなら何でもやれるって思ってここまで来たけど、自分の子供を踏みつけにしてまでは考えられないよな?そんな契約いらね。契約白紙にされる前に今夜で解散しよう…。」

そう言ってくれたのがリーダーだった謙吾さんで、その言葉を聞いた”彼”は声をあげて号泣したそうだ。


メンバー全員”五つの気持ち”で追いかけた”夢”、そしてピリオドを打った”夢”

その夢とひきかえにした想いから、”彼”は自分の中にある”理想の家庭”を築かなくては…と形をつくることに拘り過ぎたのかもしれない。

「雅が頑張れば頑張るほど、ミキは淋しくなったと思う。自分が雅の人生を狂わせた…みたいなね。雅は気持ちを口に出さないから余計に。始まりがどうだって、一緒にくらしていれば”情”みたいなものは生まれるけど、それが責任か愛かは側にいれば感じるもの。」

≪俺は責任だけでアイツと居た気がする…。≫と彼自身が言ったのを思い出した。 そのことを、玲子さんは同じ女として早い段階から懸念していたらしい。

「雅がそれに気付いたのは、美由ちゃんとの関係の中でのことよ。あの人随分変わったもの(笑) さっき謙吾も言ってたでしょ?」

「私は何も…ただ好き好きってジタバタしてるだけ情けないけど。」

「そう、”雅樹” ”雅樹”って言われる事で、気持ちで自分以外の誰かを守ることを覚えたんじゃないかな(笑)」

「でも、私は何もしてあげられない…。」

「いいの!雅を産んだ人や、ミキがした事…雅の手を離さないでいてくれればいいと思ってるはず。」

「それだけでいいのかな?雅樹、疲れちゃわないかな…?」

「大丈夫。あの人は今まで自分が求める物を追求してきた人よ。人生に躓いた時に知り合えた人が”雅樹が居ないとダメ”っていうオーラを出してくれたから”求められる事に応える”という事を初めて知ったの。あそこまで雅を変えられたのは美由ちゃんしか出来ないことだと思うわ。今の雅なら、私も謙吾を選ばなかったもの(笑)」

よかった、玲子さんが振ってくれて…。(笑)」


 女二人だけの”暴露の談合”の最後に―

「今頃、雅は謙吾にお金を返してると思う。」と玲子さんが言った。

前の奥さんから、お金の相談を受けてから一度は断ったものの、それから平気でいられる”彼”ではない、それが私が不安に感じた”あの時の彼の変調”だったに違いない。 そして、謙吾さんと玲子さんの所に同じ連絡が入った時に”彼”は決断したのだろう…。

「来月、そっちに行くとき返すから、俺が言う額だけミキに渡して欲しい。」と謙吾さんに電話で頼んだという。

当然、謙吾さんも玲子さんも反対した。

「今更、何でお前がそんな大金を貸す義理があるんだ?ほっとけよ!」

「貸すんじゃない。渡してくれるだけでいい。」この言葉に驚愕したのは言うまでもない。

「お前、まだ未練があるのか?そうでなきゃ、ただのアホだぜ!」謙吾さんは激怒したらしい。

「未練なんてあるかよ。何が不満だったんだ?って思ったから、別れるとき何もしてやらなかったけど、今の俺には守りたい女がいてさ、全然気持ちが違うんだよ…。だから慰謝料の義務がある。」

こんなやりとりの結果、”彼”がお金で購えるものではないけれど、不誠実だった過去の自分を清算するという意を酌みとって、謙吾さんは協力してくれたのだそうだ。


「お前をそんな気持ちにさせたのって、どんな女?」

「毎日会えるだけでいい…って平気で言う女(笑)」

「お前をアホにしたのはその女って事なんだな(笑)」

その後、謙吾さんと玲子さんは”彼”が私を連れてくるのを楽しみにしていたらしい…その間に≪行方不明≫≪別れ≫という事態が起こるなどと思いもせず。

それでも、この二人の協力なくしては今日の私たちは無かったかもしれない。なぜなら、ココに記した事はおそらく”彼”の口から語られる事はありえない。けれど、私が二度と後ろ向きな気持ちにならない!と思うためには、過去の事実を知る必要があった。

”彼”をアホにしてしまった私に、別れ際…二人は同じ言葉を私に託した。

 ≪雅のコトよろしく頼む…。≫ ≪雅のコトお願いね…。≫

音楽の道を断念した事、そして離婚…美由と出合った事でチャラになったと、後悔の念は消えたと…謙吾さんに伝えたらしい。

私は見失っていた想いをとり戻した、自ら夢とひきかに”彼”との人生を選択したのだという事を…。

そして今、そのことに一抹の後悔もない! 

 

蛇足になるが―

二人して笑った”雅樹、どこ行くの…?”という私の発言が≪美由ちゃんごっこ≫として、二人の間でブームを起こし 半年後…結婚12年目にして諦めていた”天使”を授かった

「美由ちゃんが夢とひきかえにした想いが、きっと私たちに響いたのよ。」と言って、玲子さんは響(ひびき)クンと命名した。当初は、ホストみたいだと言われたそうであるが”天使”が”怪獣”に変貌しつつある今、仮面ライダーシリーズのヒーローが響鬼というタイムリーな偶然響クン本人はご満悦らしい(笑)

 

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:GBA2005エッセイ

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

nude~身も心も~夢ふたたび ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。