事件簿Ⅲ 彼と私の20日間戦争-慟哭 [あの日から今日まで]
勢いあまって、成り行きで家を出たわけではなかった…。
一人でいる事が大嫌いな私が、この時だけは≪一人になりたい…。≫そう思った。
何もかも全部承知で、それでも”好き”になったはずなのに、自分が愛した人の過去の重さに耐えかねている私の心が問題だ。
導火線に火を着けたのは”彼の無意識の失言”だけれど、本当は爆弾がいつも私の心の中にあった…。
これまでにも、何度か些細な揺れはあった、その度に”彼”は誠実に、献身的に私の気持ちを支えてくれていた。何度も、”うん、わかった”とか”もう大丈夫”などと言う割りには、すぐに心がグラグラ揺れる…
少しもわかっていないのに”わかった”と言い、全然大丈夫なんかではないのに”大丈夫”と言う。そんな私は”彼”の優しさの上にあぐらをかいていたようなものだ。
≪こんな事を何度くりかえしたら私は変わるのだろう…。≫
≪いつかは雅樹が疲れ果てて”もういいよ…”と言うのではないか?≫
そんな気持ちから、何も言えなくなっていて、いつのまにか心に爆弾を抱えていたのだと思う―。
”彼”が私に注いでくれた優しさを考えれば、とても言えた義理ではないけれど、”女”として器の小さい私は、正直疲れ果てていた…。
今回の事だって、あのまま”彼”に全てを委ねてしまえば表向きの解決は出来たと思う。 でも、私の本質的なものが何も変わらないのであれば、事実上は解決していないも同然で、そして、また同じ事をくり返すだけだ…。
会社からほど近いホテルにこもり、 一人になって5日目―
その間、お勤めを休むことはしなかった…”社会人として―”という約束をした母への筋だけは通したかったからだ。
≪私じゃ、もうダメ…別れる。≫ それが私の結論。
自分なりの答えを出してから、携帯の電源を”ON” に切り替えたものの、いくつか蓄積した留守番電話のメッセージは、あえて確認しないで放置した…。
最初の”call”は奈央から…。
「ママにだけは連絡してあげて、”美由を傷つけた”って 言って泣いてた。あんなママを見たのは初めてで驚いたよ…。二人の事に口出しするつもりはないから、それだけはお願い。」とだけ言って彼女は電話を切った。彼女は自分で乗り越えるべき問題、あるいは自分で答えを出すべき問題だと言いたかったのだと思う。それが”二人の事には口出ししない―”この言葉の意味。
この電話の後、家に電話を入れる…。
「心配かけてごめんね、会社には出勤してるし、ちゃんとしたホテルに居るから、もう少し一人でいさせて。」
「わかったわ。何も知らないのにひどい事言って…ママこそゴメンネ」
「雅樹から聞いた?」
「あの後…ね。きっと美由がまだ知らない話も聞いたわよ。それは雅樹クンから話すと思うからママからは言わない。多分...今より哀しい気持ちになるかもしれないけど、その時は絶対ママのところに帰ってきて…。」
母のこの言葉は心に沁みた。 私の性格を知り尽くしていて、”彼”と私を一番近いところで見守ってきてくれた母には、私の限界点が見えていたのだろう。
もしかすると、私の心の中にある”答え”も感じ取っていたのかもしれない。それで”ママのところに帰ってきて…”という言葉で、その時は一人になる事を選ぶなと伝えてくれたのだと思った。
そして、電話を切る前に母が言った言葉―
「それでも、ママは雅樹クンを信じる気持ちを失くしてはいないから…。美由が自分の気持ちを見失う事がないように...と思ってるからね。」だった。
≪ママ…もう遅いよ。美由はもう完全に見失っています。≫
電話口では泣きたくないと我慢していた涙が一気に溢れ出した…。(号泣)
母が連絡をしたのだろう…”彼”からの電話―
逃げる必要は無くなっていた…もう答えは出ている。
「雅樹…逢いたい。」 この言葉の真意を知る術もなく、”彼”は来た。
ほんの数日会わなかっただけなのに、”彼”の顔を見た時には言葉に出来ない感情が込み上げる…。言葉にならない気持ちを持て余していた私を、”彼”もまた同じ気持ちであったのか、黙ってただ抱きしめてくれた。
その腕の中で、ぬくもりを感じながらも”彼”を近く感じる事が出来ないのだ、それは、”彼”が…ではなくて私の心が”彼”から遠くなっていたせいだった。
どれだけ強く抱きしめられても、いつものように、済し崩しにしてしまえない気持ちが確かにあって、その愛おしいぬくもりを手放そうとしている自分の気持ちを再確認した…。
「俺、何を言ったか覚えがナイけど…。」そんな言葉を皮切りに、重くてとても悲しい告白が始まる―。
”彼”の誕生日の少し前、私が心配していた直感は間違いではなかった…。
前妻からお金の無心があり、一度は断ったものの、東京に住む友人にまでそれが及んだために、一度きりの事として...そして、お金を貸す事で生まれる関係を絶つために”貸す”のではなく”あげた”と言うのだ。
「俺…美由と一緒に居るようになって初めてわかったんだ。アイツが他の男に目をむけた理由…結局、離婚する事になったのは俺のせいだって。俺はアイツに責任を果たそうとしただけで、美由を思うような気持ちで側に居たわけじゃなかった。だから、その罪滅ぼしのつもりもあって...」それ以上、もう聞きたくなかった…話し続ける”彼”の言葉を止めたくて、私は”彼”に最後のキスをした。
≪もう、そんなに苦しい顔して話してくれなくていいから…。≫
「私、雅樹の様子が普通じゃないこと気付いてた。でも、聞いても多分言わないじゃない?だから…ずっと心配してたの。こんな事になる前に話して欲しかった。」
「美由には関係ない話だよ。」
「そう…関係ないのよ。雅樹はいつだって…。」私は、左手の薬指から指輪を外して”彼”に返した。
「何のつもり?コレ…。」
「関係ないんでしょ?だから…この指輪の気持ちも返す。」
「だから、俺と美由の事なら何だって話すよ。でも、過去の事を今更、美由に話して何になる?俺はこれからだってお前にそんな話をするつもりはない。関係ないって言うのはそういう意味だよ!!!」
”関係ない…”以前にも”彼”の口から聞かされた事がある。
優しい”彼”の優しさは、時としてこんなにも”冷たい”のだ…。
「じゃあ、どうして今は話したの?こんな気持ちになってから聞きたくなかった。言わないつもりなら、何があっても言わないで!そうでなきゃ、関係ないなんていわないでよ!! 私が本当はいつも雅樹が隠す過去に怯えてたの知らないでしょ?」
「何だよソレ?俺がそんなに美由を不安にさせたのか?」
もういい…これで本当に終わりにしようと思った。
言う私も、言われた”彼”も傷つくと解っていて言えなかった言葉。この言葉を言ったら全部終わりになる―
「責任だけで側に居た人には出来ても、愛してる美由には出来ないことがあるじゃない? 不安にさせない!って言うなら、赤ちゃんが出来てもいい方法で私のコト抱いて…。」
「…。」 呆然とする”彼”
「本当はね、雅樹が悪いんじゃないの、私がもうダメ…。」
何を言っても言葉では止まらない空気を感じた”彼”は、私を強引に抱きしめてキスをしようとした…もしかしたら、私が望んでいたコトをしようとしたのかもしれない。 それも、今となっては空しいだけだ…。
「最後のキスはさっきしたよ…。明日、家に帰るから心配しないで。雅樹はパパに戻って…。」
こんな身勝手な方法でしか、愛おしい”彼”の手を離すコトが出来なかった私は、最後まで愚か者。
ドアが閉まる”ガチャ”っという音以外に何も残さずに”彼”は帰った―
自分で決めた事なのに、顔の形が変わるのではないかというくらい泣いた…。
逃げる事しか出来なかった私の慟哭の一夜
こんばんは☆
人間って貪欲な生き物だよね
初めは手に入れるためなら試練も厭わないって気持ちでいっぱいなのに
手に入れて時間が経つと、だんだんラクになりたくて
今まで気にもならなかったことが重荷になってきてしまうんだよね
そうするとだんだん辛くて逃げたくて
しまいには手に入れたものも手放したくなる・・・
きっとあとで後悔するだろうに・・・ でもよくある話ではあるよ
美由さんも雅さんも辛い出来事だっただろうね
相手を想う気持ちが時にはかえって仇になることもあるもんなぁ~
早く仲直りして欲しいよ
この前の雪すごかったね 大丈夫だったかな?
私のとこはそんなに積もらなかったから平気だったよ
寒さがほんとに厳しいからお互いあったかくしてすごさなきゃね♪
by lovery-hyutan (2005-12-20 23:26)
ひゅ~ママ様☆
恥ずかしながら、貴女のおっしゃるとおり…欲張りになっていましたね。
色々な思いを乗り越えてきて器を大きくした彼を好きになったのだから、二人の出発点からだけを大切にしなければいけない事を忘れて、過去をこじ開ける様な真似をして一人相撲をしてしまいました。(^^ゞ
これ以降は二度と”別れる”という言葉を口が裂けても(笑)言わないと心に誓った私です。
まぁそれも、雅樹クンの努力の賜物とママには言われていますが…。
二度も大雪にみまわれて大変な思いをしましたね(^^ゞ
一回目は会社帰りに道で転んで、昨日は地下に降りる階段で転んで…。
お尻に10×20サイズの青あざができています(恥)
今夜はクリスマスイブだどいうのに―どうしよう(#^.^#)
何はともあれ、ひゅ~クンにとって初めてのクリスマス☆
素敵な夜を過ごして下さいね(^_-)-☆
ネットの世界でこんな素敵な気持ちになれる出会いがあった事に感謝して。
Merry Christmas!!! 美由
by mi-mi (2005-12-24 17:03)