”彼”の宝物 [あの日から今日まで]
”彼”の宝物―
それはもちろん≪ワ・タ・シ≫と言いたいところだけれど…。
う~ん残念ながらそうではナイ。
”彼”は私が愛した時には、もう既に”パパ”だった。
そう…”彼”が目の中に入れても痛くない程、出来る事なら目の中に入れてしまいたいのではないか?と思う程に愛しんでいる宝物は、三人の子供たちだ。
付き合い始めてまだ間もない頃、家の事や時間の事ばかり気にする私に、一度だけ”彼”が弱音を吐いた事がある…。
「今、一瞬だけ子供たちを重荷だと思った…。」
お互いの気持ちを確認するまでに時間がかかってしまった分だけ、付き合い始めてからの気持ちの加速で、”彼”は気持ちのコントロールが出来なくなっていたのだろう…。私だって、もっと自由に会えたら、もっと一緒にいられたらと思わないハズはない。気持ちは痛いほど伝わったけれど、子供たちに対する本来の熱い想いが無くなってしまったのではない。
”彼”が口に出したのは一時の気の迷いであり、私までが流されてはいけないと思い、精一杯の強がりで反論した。
「私、雅サンがパパじゃなかったらいいのに…って思わない。パパになってた雅サンを好きになったのは私だから。そんな事を思う雅サンは嫌い。」
「そうだな…もう言わないよ。」
「言わないじゃない!そんな風に思わないの(笑)」
その後―
仲間の家族とのキャンプやバーベキューなど大人数のイベントには、その他大勢に紛れて私も参加して、一男二女の”彼”の宝物である子供たちと何度かふれあう機会があった。
幼児だった一番末っ子も、今では小学校三年生、最近は一緒にお風呂に入ってくれなくなったらしい。それでも、まだ”おやすみのChuはOKなのだそうだ。
そして、そのChuも拒否されてしまったのが、中学一年生の長女である。
「パパのこと”キモイ”とか言ったら、この家から出てってもらうよ(笑)」と言ったら「汚くならなければ言わないよ」とバッサリ斬られてしまったのだ。
ドライバー時代は起きている子供との会話が無理だった為に、私が提案して交換日記を始め、今もそれだけは続いている…。私と会っている時に、一生懸命書いているその姿を見ると、いつかこの交換日記まで拒否された時は、相当落ち込むだろうな~と思われる(笑)
でも、それが成長なのだよ。そろそろ覚悟してねパパ
そして期待の長男、十八歳―
出合った時は、環境の変化に気持ちが壊れて”失声症”だった少年。
「ママが言っちゃダメだっていうから、僕はパパに嘘をついた。」
「本当の事を言ったらパパは僕を嫌いになる。」それが声を失っていた本当の理由。カウンセラーの先生から聞いた事実は哀し過ぎた。
夜遅くても、一度起こして”どんな事があっても大好きだよ”と言い。自分のベッドへ連れて行き、抱いて眠ったという。
そんな、哀しみを背負わされていた少年も、今では昔の”彼”をコピーしたかのように”生意気盛り”を迎えている。
中学に上がった時、”パパ”とは呼びづらい年頃になり、そう告げられた”彼”は≪オヤジ≫はイヤだったのか(笑)人前でも普通に言えるからという理由で、≪父≫でいいじゃん…と変更命令。
中学三年生の時、「父…オレ、彼女ができた。」と告白された。
その時、今がチャンス!!と思った”彼”は「俺にも彼女いるよ(笑)」と私の存在をカミングアウトした。
「俺の女だけど、お前たちの親ではナイ。家族の形は変わらない。」
中学三年生で初めて”恋”をした子に、どれだけ理解出来たのかは分らない。
けれど、今は良き協力者として”イイ関係”を築いている。
高校二年生の冬―
離婚した奥さんの父親が大病で、初孫に会いたいと言っていると連絡があり、それを伝えると、「父がイヤじゃなければオレはいいよ。」と答えた。
迷ったあげく”彼”は息子を連れて上京した。その病院に、前妻が再婚後に生まれた子供を連れていたらしい、その無神経さに息子を連れて来た事を後悔し、激怒したのは当然のことだ。
「ごめんな…。やっぱ断ればよかったな。」そう言った”彼”に息子が返した言葉。
それを、一人で待っていた私に”ただいま!”の代わりにもう一度言ってくれた。
「なぁ~父、オレたちも美由を連れて行けばよかったよな。(笑)」
かつて、心を壊した少年の姿はそこには無くて、私を思いやる強さまで備えた”生意気”なだけではない”イイ男”がいるだけだった。
その夜、”彼”と私が週末を過ごしているマンションに行き、三人で眠った。
ちょっぴり変な”川の字”ではあるが、絆は親子に負けない自信がある。
「ねぇ航チャン、手つないで寝よっか?」と本気半分でふざけて言ってみた。
以外にも「美由が寝たら放すぞ!」と言って手をつないでくれたのだ
どうやら、この二人は私を泣かせるツボを心得ているらしい(笑)
あと二回…。
”彼”が今だ!!!と思うタイミングで娘たちにカミングアウトする時が来る。
女の子だから難しいであろう。長男の時の様に、全てがうまく行くかどうかは不明…で不安もある。それでも、避けては通れない道である。
覚悟を決めて待つしかない、いつか”家族”になるために…。
追記―
”宝物”が子供たちならば、私は何になるのか?
≪パパである為の力≫だそうだ…それって”私は充電器?”まいっか(笑)
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